Office関連

メールを閉じたときに指定したフォルダに移動するOutlookマクロ

先日Twitterで @akashi_keirin さんが下記ツイートをされていました。

どのような理由で上記のような処理をされたいのか、ツイートを追ってみると、“メール内容を確認したに特定のメールを隔離したい”とのこと。

なるほど。
Outlookには仕分けルール機能があるので、指定した条件を満たす受信メッセージ、または送信メッセージに対して特定の処理を行えますが、この機能では“メールを読み終えたタイミング”で処理を実行することはできません。

非常に面白そうなテーマ(と言ってしまっては微妙かもしれませんが…)だったので、早速試してみることにしました。

Inspector_Closeイベントでは処理できず

最初は「メールを閉じたときの処理?じゃあInspectorオブジェクトのCloseイベントあたりにメールを移動する処理を書いておけば大丈夫余裕でしょ?」だなんて高を括っていたのですが、実際に動かしてみると「実行時エラー ‘-2147221240 (80040108)’ : このアイテムのプロパティとメソッドは、このイベント プロシージャ内では使用できません。」が発生。

どうやらInspectorオブジェクトのCloseイベントが発生したタイミングでは、まだメールが完全に閉じていないために移動処理ができないようです。
同様に、このイベントよりも前のタイミングで発生するMailItemオブジェクトのCloseイベントでも処理することはできません。

ここまで試した段階で、「これ以上無理にやらなくても良いかな?」とも思ったのですが、折角なのでもう少し突っ込んでみたいと思います。

setTimeoutによる非同期処理

『Closeイベントが発生したタイミングではメールがまだ閉じ切っていないために移動できない』のであれば、処理するタイミングをちょっとずらしてあげれば良い話です。

このようなとき、私は非同期で処理を実行します。
具体的には、下記のようなコードです。
(動作確認は32ビット版、64ビット版の両方で行いました。)

ThisOutlookSession
Option Explicit

Private m_clsInspectors As clsInspectors

Private Sub Application_Startup()
  Set m_clsInspectors = New clsInspectors
End Sub
clsInspectors(クラスモジュール)
Option Explicit

Private WithEvents m_Inspectors As Outlook.Inspectors
Private WithEvents m_MailItem As Outlook.MailItem
Private m_doc As Object

Private Sub Class_Initialize()
  Set m_Inspectors = Application.Inspectors
End Sub

Private Sub Class_Terminate()
  Set m_MailItem = Nothing
  Set m_Inspectors = Nothing
End Sub

Private Sub m_Inspectors_NewInspector(ByVal Inspector As Inspector)
  If TypeOf Inspector.CurrentItem Is Outlook.MailItem Then
    Set m_MailItem = Inspector.CurrentItem
  End If
End Sub

Private Sub m_MailItem_Close(Cancel As Boolean)
  Dim src
  Const AttributeName As String = "TimeoutHandler"
  Const TargetFolderName As String = "移動先フォルダ"
  
  Set m_doc = CreateObject("htmlfile")
  src = "document.documentElement.getAttribute('" & AttributeName & "').MoveMailItem('" & m_MailItem.EntryID & "', '" & TargetFolderName & "');"
  m_doc.DocumentElement.setAttribute AttributeName, Me
  m_doc.parentWindow.setTimeout src, 1000
End Sub

Public Sub MoveMailItem(ByVal MailItemEntryID As String, _
                        ByVal TargetFolderName As String)
'メールを指定したフォルダに移動
  On Error Resume Next
  With Application.Session
    .GetItemFromID(MailItemEntryID).Move .GetDefaultFolder(olFolderInbox).Folders.Item(TargetFolderName)
  End With
End Sub
実行画面

ポイントとなるのはMailItem_Closeイベントの処理ですね。
HTMLWindow2オブジェクトのsetTimeoutメソッドを使って、時間差でメール移動処理(MoveMailItem)を呼び出しています。

この方法は、私のような中途半端な者ではなく、本当に深い知識と経験を持った方々に10年以上前に教えていただいたコードで、たまに自分用のマクロに組み込むこともあるのですが、正直、まだこれ動くの・・・!?と思うコードです。
MSHTML(IE)を使ったトリッキーな処理ですので、いつ動かなくなってもおかしくはないでしょう。

近しい処理としては、いみひと氏が「VBAからJScriptのfunctionオブジェクトを使用する方法」(下記サイト)を紹介されていますが、このようなハックを編み出されるのは大変素晴らしく、また惜しげもなく公開されていて、誠に有難い限りです。

おわりに

さて、上で書いた通り、半ば無理やり“メールを閉じたときに指定したフォルダに移動する処理”を実行してみたのですが、個人的には、やはり仕分けルールを使ってメール受信時に振り分け等の処理を行った方が無難だと思います🙂

マクロを使わなくても様々な条件を指定できますし、「スクリプトを実行する」でマクロを組み合わせることもできます(下記記事参照)。

もしくは、クイックアクセスツールバーにメールを振り分けるマクロを登録しておいて、イベントを使った自動処理ではなく、任意のタイミングでマクロを実行しても良いかもしれません。

いずれにしても、今回のテーマは非常に興味深く、試行錯誤している間もとても楽しめました。
@akashi_keirin さん、ありがとうございました!


2021/4/18 追記:
そういえば、複数のメールが同時に開かれた場合については全く考慮していませんでした。
その場合は恐らく下記ページにあるような処理が必要になるのではないかと思うのですが、私の方では実際に試していないので分かりません。申し訳ない!💦


2021/4/22 追記:
@furyutei 氏から下記情報をいただきました。
すっきりとまとまっていて、使い勝手が良さそうなコードです。

こちら↓については、たしかに実行できなくなっていました。
数日前までは実行できていたので、Windows Updateでmshtml.dllあたりが更新されたのかもしれません。
Outlookの方は4月22日時点でもコードを直すことなく実行できているので、HtmlDocumentのdocumentModeあたりに違いがあるのではないかと思うのですが、私の方では未確認です💦

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