Power Automate for desktop

「はじめてのPower Automate Desktop」レビュー

以前書いた記事でも紹介していますが、株式会社ASAHI Accounting Robot 研究所(通称:ロボ研)さん( @AsahiRobo_RPA )が書かれたPower Automate Desktop(PAD)の解説書「はじめてのPower Automate Desktop ―無料&ノーコードRPAではじめる業務自動化」( #ロボ研PAD本 )が今月の27日(電子版は22日)に発売されます。

下記ツイートの通り一部の書店では先行発売されているようなので、私もさっそく購入してきました。

今回は本書を読んだ感想などをまとめてみようと思います。

「できるPower Automate Desktop」との比較

Power Automate Desktopの入門書としては、あーちゃんさん( @aachan5550 )が書かれた「できるPower Automate Desktop ノーコードで実現するはじめてのRPA」( #あーちゃんPAD本 )も出版されており、ロボ研さんはこちらの本の監修もされています。
両方の本を読んだ上で、まずは両者の特徴を簡単にまとめておきます。

PADに触れたことが無い方なら「できるPower Automate Desktop」がオススメ

あーちゃんPAD本は「ここまで書くのか!?」と驚くくらい丁寧に解説されており、私としてはこれまでまったくPADに触れたことが無い方であれば、まずはあーちゃんPAD本の方を読むことをお薦めします。

もちろん、これはロボ研PAD本の解説が雑という話ではなく、ロボ研PAD本も一般的な入門書レベルで丁寧に解説されているのですが、あーちゃんPAD本は例えば「〇〇の部分をドラッグして選択して[Delete]キーを押す」「〇〇をクリックして〇〇の下までドラッグ」といった具合に、操作手順が細分化して説明されており、さらに手順部分が赤枠で囲われていたり、ヒントやポイント部分の背景色も色分けされていたりと、視覚的にも非常に分かりやすい作りとなっています。
この分かりやすさはまさに「できる」シリーズの真骨頂ともいえるでしょう。

PADに全く触れたことが無い人でもこれを読めば概要が分かる、簡単なフローが作れるようになる!、それがあーちゃんPAD本です。
反面、踏み込んだ内容までは書かれていないので、“もっとPADのことを知りたい!”“もっと実践的なフローの作り方を知りたい!”、そう思ったときに出番となるのがロボ研PAD本です。

実践的な内容の「はじめてのPower Automate Desktop」

書籍案内ページにも書かれている通り本書はPADの入門書であり、RPAの概要からPower Automateの中のPADの位置づけ、PADのインストール方法や画面説明、各アクションの使い方など、フローを作成するのに必要な内容が一通りまとめられています。

PADからWebページやExcel、アプリケーションを操作しながら使い方を学んでいくわけですが、用意されている練習用のサイトやアプリケーションが実に“それっぽい”です。実際に業務で使っているようなサイトやアプリを題材とすることで、学んだPADの使い方をすぐに現場で活かせるように作られていることが本書の大きな強みと言えます。

実は、あーちゃんPAD本のWebページの操作例で扱われているサイトも同じロボ研さんのサイトなのですが、ロボ研PAD本の方が踏み込んだ内容となっており、Webページからのテーブル形式のデータ抽出やExcelファイルとの連携方法についても書かれている上、第8章の「応用操作」ではUI要素のセレクターの編集まで触れられています。

本書で書かれていることをマスターすれば、単に動くだけのフローではなく、安定性が高く効率的なフローの作成・修正ができるようになるでしょう。
反面、「要素」や「属性」といったHTMLやXMLに触れたことが無い人であれば馴染みのない単語も普通に出てきますし、理解するにはHTML、もっと言えばDOMやCSSセレクターの知識も必要となってきますので、本書を読んでいて分からないことがあれば、まずは気にせず読み進め、後で振り返ることをお薦めします。

私が読んだことがある上記2冊に限って言えば、出版元が異なってはいますがどちらもロボ研さんが関わっているので統一感があり、学習の相乗効果は高いと感じます。
あーちゃんPAD本で基礎を理解してロボ研PAD本でより実践的なフローの組み立て方を習得する、逆にロボ研PAD本を読んで躓くことがあればあーちゃんPAD本で基礎を復習する、といった具合に上手く読み分けできることでしょう。

有償ライセンスへの言及

今年3月に無償化が発表されてからPADへの注目度は高まっていますが、無償で利用できる範囲はごく一部に過ぎず、フローの共有や管理、定期実行やクラウドフローとの連携といった、組織内での利用に必要と思われる機能を実行するには有償のライセンスが必要となります。

本書では有償ライセンスについても触れられており、一番最後のページには組織内でPADを活用するための重要な考え方が書かれているので、下記に引用させていただきます。

作成したフローをほかのユーザーと共有することや、フローの稼働状況を監視する機能、実行管理機能にも、有償ライセンスが必要になります。これらの機能は、企業でPower Automate Desktopを導入して展開していくためには満たすべき要件です。組織内でどのようなフローが作成されて実行されているのかを把握することで、組織内での自動化のニーズを理解でき、「野良ロボット」の抑制や実行できるフローの組織内管理、統制も可能となります。さらに、ニーズを把握して作成されたフローを、それを必要としている社員に共有することで、組織内に存在する大小のあらゆる業務の自動化を促進することが可能となります。

「はじめてのPower Automate Desktop」(技術評論社) p.299 より

組織内のPAD利用において、私個人としてはフローの作成自体は大した問題ではなく、導入はもちろんフローをどのように管理・運用していくのかが大きな課題だと考えています(RPA導入・運用経験の無い私が言うのも説得力がないのですが・・・)。

ロボ研さんはPADの前身であるWinAutomation時代から多くの企業に導入支援を行っており、このあたりの豊富な実績とノウハウをお持ちです。
本書の次の段階として、上で引用させていただいた『フローの組織内管理、統制』に焦点を当てた本もその内出していただけると非常に嬉しいなー!、と無茶ぶりをしつつ今回の記事を締めたいと思います。

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