イベント関連

「【JCUEセミナー】ストランディング個体からのメッセージ」に参加しました。

5月9日(木)に開催された、NPO日本安全潜水教育協会(JCUE(ジェイキュー))主催のセミナー「ストランディング個体からのメッセージ ~海洋汚染を考える~」に参加してきました。

JCUEとは?

JCUEとは、NPO法人 日本安全潜水教育協会の通称で、“NPO法人として安全で楽しめるダイビング技術の振興や、救急法・救助法の普及及び啓蒙などの事業を行なうと共に、環境保全活動や環境教育なども行い、社会に貢献しようとする団体”( https://jcue.net/about/ より )です。

会員紹介ページを見る限り、ダイバーの方やインストラクターの方が多く所属されているようです。

一度も潜ったことがなく、ダイビングと言えば「ぐらんぶる」くらいしか思いつかない私は非会員ですが、今回のセミナーは一般参加OKでした(非会員の場合、参加費1,500円、学生無料)。

セミナー概要

セミナーの概要は下記の通りで、最近話題になっているマイクロプラスチックPOPsといった海洋汚染問題について、ストランディングした鯨類を調査することによって明らかになった現状を知ろう、というものです。

昨今深刻な問題となっているのが、残留性有機汚染物質Persistent Organochronic PollutantsーPOPsの生物濃縮であり、海洋生態系の頂点に君臨する海の哺乳類にはこれらの物質が高濃度に蓄積されている。
講演ではその影響評価の一部を紹介する。
最近では、大量のマクロ・マイクロのプラスチックが海洋に流出している事実が様々な媒体で取り上げられているが、現場では20年前より、ストランディング鯨類の胃内容物にプラスチックゴミが混在していることを観察している。

https://jcue.net/seminar/190509_info/ より

プラスチックといえば、下記記事でも書きましたが、昨年8月に由比ガ浜海岸にストランディングしたシロナガスクジラの個体からもプラスチック片が見つかったことが話題になっていましたね。

今回のセミナー講師は、なんとこのシロナガスクジラの調査、同定を行った研究者の一人である国立科学博物館田島 木綿子先生です。

田島先生から直接貴重なお話しが伺えるまたとない機会、これは申し込まざるを得ない。
ストランディングについてググっているとき、たまたま本セミナーを知れてラッキーです。

セミナー会場

会場は池袋、サンシャインシティの近くにある「あうるすぽっと」の会議室Bで、Wi-Fi環境も整っていました。

扉に貼り付けてあった紙に書かれたSSIDとパスワードを入力して接続完了。
回線速度も十分快適です。

学んだこと

ストランディングとは?

ストランディングとは、もともとは水中にあるものが陸に乗り上げてしまうことを意味し、ここでは特にイルカやクジラといった海棲哺乳類が座標・漂着することを「ストランディング」と言います。

生物が生きたままストランディングすることを「ライブストランディング」、死んだ状態でストランディングすることは「デッドストランディング」と言いますが、この2つはあまり区別しないようです。

また、母子以外の2頭以上が生死を問わず、同時にストランディングすることを「マスストランディング」と言います。2011年に茨城県鹿嶋市の海岸で50頭ほどのカズハゴンドウが打ち上げられたニュースがありましたが、これがマスストランディングですね。

日本では、カズハゴンドウマッコウクジラスジイルカのマスストランディングが多く、2016年には国内で初めてシワハイルカのマスストランディング(種子島の長浜海岸)も発生しました。田島先生曰く、このときは3月末の年度末でめちゃくちゃ大変だったそうです。

件数で言うと、日本では年間約300件ほどストランディングが発生しており、海岸を管理する地方自治体からは“厄介な粗大ゴミ”として扱われることも多いのですが、タイヘイヨウアカボウモドキコククジラといった、極めて珍しい種類のイルカやクジラがストランディングすることもあり、ストランディングした個体を調べることは、こうした貴重な種の基礎情報の蓄積に繋がります。

ストランディングの原因

なぜストランディングするのか?という、ストランディングの原因については未だに分かっていないことが多く、もともと病理学を専攻していた田島先生は「病」という観点から、研究を続けておられます。

外的要因も原因の一つとされ、

  • プロペラによる裂傷
  • 未消化な胃内容物が豊富
  • 羅網跡
  • 所見+病理調査の結果、「内臓に著変なし」

といった状況が確認されると、事故や混獲と判断されるとのことです。

また、講演後の質疑応答で、「ストランディングの原因として磁場が影響していると聞いたことがあるが、それは本当か?」という質問がありましたが、田島先生によると、確認されているのはスコットランドの例のみで、少なくとも日本では確認されていないのだとか。磁場のみがストランディングの原因ではなく、あくまでも複合的な要因の一つと見た方が良いでしょう。
(関連記事:Northern lights linked to North Sea whale strandings – BBC News)

POPsの影響

近年、新聞やニュースなどで度々話題になっている「POPs」についての話もありました。

化学物質の中には、環境中で分解されにくく、人や野生生物などの体内に蓄積しやすく、地球上で長距離を移動して遠い国の環境にも影響を及ぼすおそれがあり、一旦環境中に排出されると私達の体に有害な影響を及ぼしかねないものがあります。このような性質を持つ化学物質は通称POPs(ポップス)と呼ばれています。POPsとは残留性有機汚染物質(Persistent Organic Pollutants)の頭文字をつないだ略称(語尾のsは複数を示しています)で、例えば、ダイオキシン類やPCB(ポリ塩化ビフェニル)、DDTといった化学物質が挙げられます。

https://www.env.go.jp/chemi/pops/pamph27/pdf/mat01.pdf より

海洋生物の生態系の頂点に立つ鯨類はPOPsを蓄積しやすく、特に、沿岸に暮らすスナメリなどは人間活動の影響を受けやすいそうです。

ストランディングした個体の病理解剖を行ったところ、高濃度のPOPsの蓄積によって免疫機能が低下し、それによって寄生虫の感染を引き起こし、結果として重度の肺炎を発症して死亡したと見られる例もあったのだとか。

ただ、POPsが鯨類の生態系に具体的にどのような影響を及ぼしているかについての研究はまだまだこれからで、ストランディング鯨類の胃内容物からの解析も急務となっているそうです。

感想

基礎情報が無いと、解剖したとしてもその状態が正常なのか異常なのかを判別することができません。ストランディングした個体を調査することは、情報を蓄積していく上で非常に重要であり、情報の蓄積が、海棲哺乳類の生態解明に繋がります。

そのため、田島先生が行われているようなストランディングの調査活動や研究が広く知られるようになることは、ストランディングの報告件数の増加に繋がり、延いては新たな発見に繋がっていくことでしょう。

では、実際にストランディングを発見した場合にどこに報告すれば良いのかというと、地元の博物館や水族館、国立科学博物館などに連絡すれば、全国的に何かしらのネットワークで繋がっているので、情報共有できるそうです。

昨年ストランディングしたシロナガスクジラの調査概要を見ると、一般の方が地元警察に通報→警察から水族館に連絡、といった経路で情報の伝達がなされているので、最寄りの警察署に連絡しても良いでしょう。

ストランディングネットワーク北海道のサイトでは、「生存しているかどうか確認してください」「写真等で記録を取ってください」「生存している場合は,状況に応じて,海に戻す努力をしてください」といった、ストランディングを発見したときの対応がまとめられていますが、ぶっちゃけ余程慣れていないとここまで対応できません。

個人的には、1.まずは地元警察に通報、2.余裕があれば地元博物館 or 水族館に連絡して指示を仰ぐ、という対応が良いのではないかと思います。

今回の講演は、第一線でストランディングの調査・研究を行っている田島先生から直接お話を伺うことができ、大変勉強になりました。
(冒頭にあった“クジラとカバは親戚”(鯨偶蹄目)というのも初めて知りました。)

質問に対しても丁寧にご回答いただき、内容も非常に分かりやすかったです。
惜しむらくは、時間が短かったことでしょうか。
気が付けばあっという間に講演終了、調査の苦労話や発見など、もっと聞ききたかったのですが、時間が限られているので仕方ありません。

JCUEでは今回のようなセミナーを定期的に開催しているので、興味があるセミナーがあれば、また是非参加しようと思います。

関連Webサイト

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